世界で1億6800万人の子供が低体重にあります。
この子たちは病気に対する抵抗力が弱いため、2000年には370万人が命を落としたと考えられています。
危険な性交渉とは、もちろんエイズに感染することです。
全世界で4000万人といわれる患者の17%が、アフリカの人たち。
サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)では特に深刻で、この地域の平均寿命はエイズさえなければ60歳であるはずが、実際には40歳になっています。
ボツワナでは1990年に17・9歳だった平均寿命が、17年後の2001年には15・7歳と、なんと2年以上も短くなってしまいました。
これらの国では、まず乳幼児と出産年齢にある女性の栄養と衛生状態を改善し、エイズの予防と治療を行なうことが、国民の健康のために最優先されるべきであることがわかります。
東南アジアや中国、韓国、中南米などが含まれる低死亡率開発途上地域では、低体重が依然として4位にある一方で、飲酒、高血圧、体重超過、高コレステロールという要因が上位に出てきます。
生活が豊かになった代償でしょう。
食生活が欧米化して、脂肪摂取量が増加していることも一因として考えられます。
さて、日本を含む先進地域で何が健康寿命を短縮しているかは明らかです。
上位7項目は、生活習慣病に密接に関係しているものばかりです。
中高年がお医者さんから注意きれる耳の痛い言葉、「タバコは止めなさい。
お酒はほどほどに。
もう少し体重を落として。
脂っこいものや塩辛いものは控えて。
野菜を食べて。
もっと運動を」は、全部この7項目に関係しています。
この表で環境問題と言えるものは、開発途上地域で見られる「危険な水、保健衛生施設」と「固体燃料に起因する室内大気汚染」くらいです。
危険な水といっても、日本で時々話題になる水道水の水質のようなことではありません。
トイレが全くないか、あっても糞尿が十分に処理されていない地域では、水源がコレラやチフスなどの病原体で汚染されやすくなります。
「危険な水」とは病原体で汚染された水のことです。
このような水が消毒しないで使用されるために、毎年170万人が下痢などの感染症で死亡しています。
今度は日本人について、もう少し詳しく見てみましょう。
産業技術総合研究所のNさんを中心とした研究チームが、日本人の「損失余命」を物質別に推定しています(6)。
損失余命はDALYと似た考え方で、それぞれの物質(要因)によって、日本人の寿命がどれだけ短くなっているかを示す数値です。
各物質による年間死亡リスクと、日本人の人口動態から計算します。
ここからも明らかなように、日本人の寿命を縮めている最大の要因は喫煙です。
タバコをやめることで、余命は数年から数十年延びることになります。
年間死亡リスクでも家畜の糞、薪、藁、石炭などを室内で燃やすことで起きる大気汚染です。
世界の半数の人たちが、いまもこのような燃料を調理や暖房に使っていて、換気の悪い室内には高い館濃度で汚染物質が広がります。
被害を受けるのは調理を行なっている女性が多く、呼吸器系の病気にかかってしまうのです。
報告書では、このほかにも環境関連要因として都市大気汚染、鉛の摂取、気候変動についてDALYを算出していますが、上位項目には入ってきません。
私たちが普通に思いつく環境問題は、健康寿命を縮める要素としては大きくないということです。
そうでしたが、交通事故による損失余命は喫煙より1桁小さな値です。
環境中の汚染物質による損失余命はさらに小さく、年ではなく日の単位になります。
そのなかではディーゼル粒子、ラドン、ホルムアルデヒドが大きいのですが、それでも数日から十数日の間。
ダイオキシン以下の物質の損失余命は、全部足しても1週間に届きません。
日本の環境中にある汚染物質をすべて取り除くことができたとしても、寿命は2ヵ月も延びない。
タバコの煙は別として、統計データで見れば、日本の環境は人の命を短くするほどには汚染されていないというわけです。
ラドンは自然界に広く存在します。
花岡岩にはウランなどの放射性物質がわずかに含まれていますが、これが崩壊してラドンになり空気中に拡散するからです。
そしてラドンは放射線(α線)を出して崩壊し、最後には鉛に変化します。
人間が自然界から受ける放射線は、ラドンやそれが崩壊してできた元素が放射するものが多く、自然の放射線量の半分以上を占めます。
このため、ラドンを多く含む環境に長期間いると、肺ガンになるリスクが高まります。
米国環境保護庁(USEPA)によれば、ラドンはアメリカ人の肺ガン発生原因の第2位で(もちろん第1位はタバコです)、肺ガンによる死亡の17%に室内におけるラドンが関係していると考えられています。
人間が1日で一番長時間滞在するのは室内ですが、地下の岩盤から発生するラドンは、室内にこもりやすいからです。
アメリカにはラドン濃度の高い地域が多く、USEPAが市民向けに対策パンフレットを作るなど、ラドンへの関心も高いようです。
アメリカの環境科学の教科書には、大気汚染の章でラドンに一番多くのページを費やしているものもあります。
USEPAは、室内のラドン濃度が大気14あたり4ピコキュリー(1uあたり15Oベクレル)を超えたら、強制的に換気するなどの方法でラドン濃度を下げることを勧めています。
非喫煙者が14あたり4ピコキュリーのラドンを生涯吸い続けた時の肺の発ガンリスクは、1000分の7です。
リスクを計算する場合、生涯を、年とすることが多いので、で割って年間発ガンリスクに直せば、3万分の3。
大雑把に発ガンリスクと死亡リスクを同じと捉えれば、ラドンの年間死亡リスクは日本の交通事故よりも高く、入浴並みになります。
このリスクはタバコを吸うと急に高くなり、喫煙者が同じ濃度のラドンを吸った場合の生涯発ガンリスクは1000分の脇。
年間リスクは3万分の4になり、交通事故より妬倍も大きいということです。
世界の屋内ラドン濃度の平均値は、1uあたり17ベクレルです。
銘ベクレルでの年間発ガンリスクは4万分の1.7、火事による死亡リスクと同じくらいでしょう。
日本はラドン濃度が低く、室内濃度は4ベクレルと世界平均の半分程度です。
地域別に見ると西日本の方が高いようですが、帥ベクレルを超える県はありません。
それでも損失余命は9.9日と受動喫煙に匹敵します。
けれども、天然由来の物質であって公害ではないからか、日本ではラドンのリスクにはほとんど関心が払われていません。
ところでラドンには病気を治す効果があるとも考えられ、オーストリアやドイツではラドンによる医療行為が認められています(オーストリアのバートガシュタインでは、以前は金鉱だった坑道内の高濃度ラドン(1uあたり5万ベクレル)を利用して、ラドン吸入療法が実施されています。
慢性リューマチ疾患や神経痛、歯周炎、内分泌腺障害(更年期障害、不妊症等)など多岐にわたる病気の治療に効果があるそうです。
日本でも、ラドンを多く含む温泉はガン、糖尿病、リューマチ、不眠症、皮膚病などによく効くと言われています。
温泉法によって、14中に2ナノキュリー(ベクレル)以上のラドンを含有する地下水は、ラドン温泉として認められます。
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